『泥棒役者』とその主題歌『応答セヨ』の作用

 

 

泥棒役者、公開おめでとうございます!

初日の舞台挨拶中継回を早速見てきまして、宣伝の通り『超喜劇エンターテインメント』でありながら、ところどころ胸がぎゅっとなる、最高の映画でした。さっきまで笑ってたのに、気づいたら泣いてたみたいなのが何回もあったので。まるちゃんにあの役を、とキャスティングして下さった西田監督には感謝しかありません。

 

今回は『泥棒役者』とその主題歌『応答セヨ』の話をしたく、でもTwitterにはまだ映画を見てない人も多いので、こちらで書こうかと思います。(ネタバレダメな人は見ないでね)

 

   

 

 

 

泥棒役者』と主題歌『応答セヨ』


「つまずいてばかりの僕を 君だけは笑わなかった」
から始まる『応答セヨ』は、基本的に「僕」「君」のふたつの人称で構成されています。ラジオで初めて聞いたときは、「僕」という自分と「君」という他人がいるんだと思っていましたが、歌詞をしっかり読むと「僕」=「あの日の僕」「遠い日の僕」=「君」。つまり、「僕」現在の自身を、「君」過去や子供の頃の自分自身を指していることが分かります。


「君」は、将来の夢や大きくなった自分に色んな夢を持っていたのでしょう。ですが、「僕」「君が思うほどは まっすぐに歩いてこれなかった」んですよね。大きくなるにつれて色んな挫折や後悔を味わい、その姿は純粋な子供の頃の夢と違った。ある意味、別人ではありますよね。だから一人称のと、二人称ので今と過去になってるのかな?

 

  

そんな『応答セヨ』は『泥棒役者』に非常にあっています。ぴったりすぎて、それで泣いたところもある。

 

泥棒役者』はまるちゃん演じる大貫はじめが主人公です。はじめは真面目に働き、恋人と共に幸せに暮らしていますが、実は少年院に入っていたという過去がありました。その過去を恋人に告げていない、ということをいいことに脅され、はじめは再び盗みの手伝いに手を染めてしまいます。

 

この時点で、『応答セヨ』は主人公、はじめの曲なのでは?と思ったんですよね。ほんとに小さな時、幸せな家庭がはじめにもあった時代、彼にもいろんな夢があったはずだけど、つまずいてしまった。もしかしたら、今は子供の時の夢のようにはなれていないのかもしれない、なんて感じます。

ですが、それだけではありません。豪邸に来たセールスマンの轟、前園の担当編集者の奥も実は心の中で引っかかったままのものを抱えており、さらにはファンキーでポップな明るいキャラ付けがされている前園先生も実は、今は売れっ子作家ではない、ということが分かります。

 


前園邸に集まった4人はそれぞれ夢を持っていたけれどそれがままならず、どこかでつまずいてしまった人達なんですよね。過去も経歴も職業も全く違うのに、境遇が同じ人たち。『応答セヨ』はそこにぴったり当てはまるのです。
西田監督と色々と話をしてこの詞を書き上げた晴一さんすごすぎない……?

 

 

 

 

 

泥棒役者』におけるスターライダー

 

流星、つまり流れ星が流れている間に3回願い事をする、っていうのは小さなときからよく聞く話ですよね。『応答セヨ』の1番では「子供の頃に 願い事をかけた」流星に「いつかまた逢えたら その背中へと 飛び乗って」スターライダーになるのだと、未来の自分の姿を空想しています。流星=なりたかった自分、のようですが1番の時点ではかなり仮定の話なんですよね。しかも、あまり本気にはしていない感じの。

 

ここはさっきも書いたように、映画内でそれぞれ昔は夢を抱いていたのに、今は夢とは違った姿になった4人の姿が見られます。

 

 

 

そして2サビ

「ピントずれた望遠鏡 映し出す後悔」

「灰色の景色に 浮かぶ昨日の僕」

「いっそ目を閉じちゃって」

「見たかった世界を心に描こう」

 

前園邸に集まった4人は、1日共に過ごすにつれてそれまで心にあったしこりのようなものが溶かされていきます。初めは勘違いから始まった不思議な関係が、共に過ごすにつれ、気のおけない仲間のような関係へと変化する。その関係の変化とともに、自分の心もどんどんと前向きな気持ちへの変わっていくのです。「昨日の僕」を見ないふりして、前向きに「見たかった世界」を心に持ったように私には思えました。

 

そしてラスサビの最後

「まだ見ぬ世界 今 飛び立とう」

「僕はスターライダー」

 

1番のサビの仮定的なものとは違って、最後は今から共に旅立とうとしています。流星は昔願い事をかけた、なりたかった自分ですから、それと共に飛び立つということは、夢に近づいているんだと思うんですよね。今までと違う世界に、前向きに飛び込んでいこうとする。

 

それは、前園邸で色んな事件がありながらも、そこで過ごしたことで心境の変化があったみんなと同じだと思います。はじめは恋人に過去を告げることにした。さらに前園先生は「タマとミキ」の続編を、轟はセールスマンとしての一歩を、奥は編集者としての仕事の意義を見つけ、なりたい自分への一歩を踏み出し始めました。

前園邸から出て、これからの自分自身に希望を抱きながら飛び立った人たち。 

多分その一歩踏み出した彼ら自身が、スターライダーなんだと思います。

そして、ちょっとした後悔や色んなことがあったけれど、この映画を見て元気や勇気をもらえた人もスターライダーになり得るんじゃないでしょうか。

どんな人でも、なりたかった自分になれるかもしれない。そんな希望や可能性を、映画にも主題歌にも私は感じています。

 

 

 

 

最後に

 

西田監督と作詞をされたポルノグラフィティ新藤晴一さんがやり取りをして『応答セヨ』の歌詞が出来上がっているとわかり、だから『泥棒役者』と『応答セヨ』の起承転結が一致しているのか、とこの文章を書きました。ほんとにリンク性が強い。『破門』と『なぐりガキBEAT』もそうでしたが、『泥棒役者』と主題歌『応答セヨ』はワンパッケージのようなものなんだと思います。個人的には、双方、互いによって完成する、みたいな感覚。それぞれめっちゃエモいんだけど、合わさると超エモいみたいな。

 

色んな考察をしてますが完全に個人的主観です。皆さんはどう感じたのかも見てみたいですね。解釈は10人いれば、10通りあると思いますし。

 

皆さんお時間あれば是非とも劇場で『泥棒役者』を見てください。ストーリーが終わってからの『応答セヨ』は納得の主題歌でしかありません。最高。エンドロールの途中に組み込まれているちょっとした話もとってもいいです。そこにも、4人とは別に一歩を踏み出した人がいますよ。 

 

 

 

 

 

追記

ここまででは触れてないんですが、私的に1番ぐっときた歌詞は

「垂直ジャンプ 0.5秒 20センチ しょぼくてゴメン」

「それだって 空に近づいたと 言い張っていいでしょ?」

でした。すばるくんの歌い方でこの歌詞歌われたらめちゃくちゃ胸がしんどい。歌番組はTVサイズなのでここを聞けないのが非常に惜しい………聞きたいからライブでやって……

 

あと『応答セヨ』はインストゥルメンタルまで最高。ピアノのグリッサンドやウィンドチャイムが星のまたたきや流星の音みたいで個人的に好きなのと、2Bのサビ前でボーカルのラインをベースがなぞっているのもよく聞こえます。作詞も作曲も天才。ヤバい。ちなみにインストは通常盤に入ってるよ。1234円だよ。お得か。

 

 

 

映画

映画「泥棒役者」公式サイト 11/18(土)公開

 

主題歌

応答セヨ(通常盤) インフィニティ・レコーズ https://www.amazon.co.jp/dp/B075ZQHL3C/ref=cm_sw_r_tw_awdo_x_yNveAbPG5MMXT